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-鈴樹理亜の創作館-
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<緑の民の世界>シリーズ。
世界設定説明的な話ですが、まずこれを。
シリーズで唯一の既発表作品。


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=====


0.序

 

0.序

 緑の民、リーフルの王には二人の娘があった。長女は〈庶民〉で次女は〈世継〉。長女は慣例通り、〈庶民〉の養子となって王のもとを去った。
 ある年、荒野の遊牧民エリーがリーフルの都に攻め入って来た。多くの者が殺され、掠奪され、逃げた。エリーは王とその〈世継〉を傀儡として生かし、都にとどまった。

 年月が経過した。グドゥがエリーの長に選ばれたとき、それまでの例に倣わず、リーフルへの支配の強化を行なった。そして、リーフルの間における王の存在の大きさに気づくと、グドゥは自ら剣を取ってその時の〈世継〉であった、王の孫である少年を殺した。都は希望の灯を失い、幽閉の老王は嘆き悲しんだ。


1.村

 ザガーは飛び起きた。誰かの悲鳴を聞いたような気がした。鋭い苦痛に満ちた悲嘆の声。少年は頭を振ると、顔を洗いに外へ出て行った。
 手桶の水に映った顔を、少年はまばたきもせずに見つめた。左の眼が火のように赤い。昨日までは両眼とも黒かったのに。確かそうだったはず。急に記憶がぐらつき、ザガーはまた頭を振った。
 村人の少年に対する態度も微妙に変わった。保守的な小さな村の者たちは何よりも物事の変化や奇妙なことを嫌う。
「村から追い出せ」そんな言葉もささやかれた。「ただでさえあの子は“黒眼”なんだ」
 ザガーは同じ年頃の子と遊ぶにも、いつもゲームの審判を進んでするような子どもだった。特に親しい友人はおらず、おとなしい子という程度だったのだが。村長“黒眼のノアン”は苦悩した。同じ“変わり眼”を持つ者として、少年のことはよく知っていたからだった。
「その子を、除いてはならない」
 村長の家に集まっていた人々はさっと振り返った。そこに“隠遁者”が立っていた。離れて住んでいる青い眼の彼らはめったに村の中心部にはやって来ないはずだった。その独特な切り口上と鋭い目つきが事を決した。表面的にはそれまでと変わらない日常が戻ったかのようだった。しかしザガーは両親のもとでは今まで以上に、うちとけて生活することはできなくなっていった。紫の眼の両親のもとでは。

「レザガードア」
 呼ばれてザガーは振り返った。ときどき見かける同年輩の“隠遁者”の娘、ダーハンがそこにいた。
「俺の全名はザガードアだが」
 ダーハンは黙って首を振った。どういう意味だ?
「俺に用か」
 用がなければ“隠遁者”が声をかけてくることなどないのは周知の事実ではあったが。ダーハンは素っ気なくうなずいた。
「館主が話があると」
 ダーハンはくるりと向きを変えて歩き始めた。ついて来ると決めてかかっている態度にザガーは一瞬反発を覚えたが、黙って後に従った。
 ザガーは一カ月程前から一つの思いに悩まされていた。越えて行かねばならない。あの北の山脈を。今も北の山脈を見つめていたのだが、答えは得られず絶対的な義務感が強まるばかりだった。
 ダーハンがザガーを連れて行ったのは“隠遁者”の首長、館主の家だった。
「レザガードア。七年前、君の片眼が赤変したときから、我々は各地を探索していた」中央にすわっていた男-これが館主だろう-が前置きもなしに話し始めた。それでもこちらに説明するために、“隠遁者”としてはかなり余計にしゃべっているのだろう。「その探索者の一人が昨日戻ってきた。その者は北の山脈の向こうに我が民リーフルの都を見出した。そこはいまだにエリーに支配されていた」
 ザガーはちょっと眉を上げてその男を見た。
「数十年前、蛮族(エリー)が緑の民(リーフル)の都を攻めた。ある者たちは逃げ、北の山脈を越えてこの地に移り住んだ。〈庶民〉は忌まわしい記憶を避けて話さぬようになり、彼らから過去は失われた。我ら〈修験者〉は数も少なく、すべてを守ることはできなかった。命も、心も」
 男は言葉を切り、傍らの書物を取り上げた。ザガーはそのさまをじっと見ていたが、瞬間、その文面が目の前に浮かび上がったような気がして、思わず目を閉じた。
「『緑の民(リーフル)は三(み)つの民より成る。一つは〈庶民〉、紫の眼を持ち、諸々の技能・芸能に秀でたり。二つは〈修験者〉、青の眼を持ち、武と学をその生業(なりわい)となす。残るは〈王族〉、黒の眼を持ち、統治の業に就く者なり。〈王族〉に、片眼、赤き者あり』」
 男は顔を上げた。
「一月前、都で唯一人赤の眼を持つ者、〈王〉が死んだ。そして〈王〉とその〈世継〉は名前の初めに『レ』をつけるのが通例だ」
 男の顔を見据えたザガーは、次の言葉を口に出されるより早く捉えていた。
「君は〈王〉だ。レザガードア」


2.都

「アレヌお嬢さん、今日はどこへ?」
 いつものからかい気味の声に、アレヌはきっと相手を睨みつけた。
「どこだっていいでしょ、エリーの若様」
「相変わらず気位が高いんだな。〈王族〉でもないくせに」
 エリーの青年、ダヤイはにやにやしながらアレヌの嫌がるところをついた。
「何よ、背高のっぽの青っちろい肌の真黒頭の野蛮人!」
 ダヤイは声を上げて笑い出した。
「おい、知ってるだろ。それは俺たちにとっちゃ誉め言葉になるんだぜ。草色頭の紫花の眼のお嬢さん」
 アレヌの怒りに燃えた紫の眼がダヤイの後方に集中される。が、アレヌは懸命の努力で目を閉じた。背後でガタっと屋根の石材が動いたが、ダヤイは気づかなかった。
「この次はもっと気のきいた悪態を仕入れておいてあげるわ」
 アレヌはさっとその緑の髪を振り、そう言い捨てるとダヤイに背を向けて歩み去った。
 アレヌは王の孫娘だった。しかしアレヌは〈庶民〉であり〈王族〉ではない。もっともそれゆえに、王に近しい者であったにもかかわらず、かなりの行動の自由が黙認されていた。その王は、七年前〈世継〉が、アレヌの兄が殺されて以来、すべての望みを失ったようになっていた。アレヌは養家から呼び寄せられてそんな老王の話し相手となり、身の回りの世話をしていたのだった。
 そのとき王城から、激しく打ち鳴らす鐘が聞こえてきた。間もなく都に布令が回された。-王が、亡くなられた。

「長。リーフルの王が死んだそうですね」
 ダヤイは長グドゥの部屋に入りながら言った。その部屋には長に近しい者たちが集められていた。
「そうだ」グドゥは他の者たちを見回した。「草頭(リーフル)どもをしばらくよく見張っておけ。絶望に駆られて馬鹿な事をする輩がいるかもしれんからな。特に“闇眼”は家から出すな。感情的な“花眼”を煽動して何か企むかもしれん。奴らは“花眼”どもより頭がいい。“空眼”がいないとはいえ気を抜くなよ。もちろん“火眼”についての噂を聞いたらすぐ知らせろ。よし、行け。ああ、ダヤイは少し残れ」
 他の若い者たちは、ダヤイを羨ましそうに見ながら部屋から出て行った。
「何です、イーズニ?」
「俺は気になるのだ、ザヤーリ」
 互いにエリーの二番目の名、部族内でのみ使われる〈内称〉で呼び合って話した。ダヤイは長グドゥと個人的に親しかったからだ。
「七年前俺のやったことは正しかったのか、とな」
 グドゥはこのような悩みを他の者にはめったに見せなかった。エリーの長は世襲ではない。ダヤイはまだ若いが腕が立ち、明るい性格で多くの者に慕われ頼られていた。エリーの慣わしではそのような者が長に選ばれる。ダヤイはグドゥの後継者と目されていた。
「草頭どもの行動がかえって読めなくなった気がする。おまけにこの石の都に慣れきってだれた者たちが最近増えてきた。そろそろ草原に戻る頃合いなのかもしれんな」
 グドゥもダヤイもこの都の生まれだった。それでも石の都はどこか落ち着かない気がしていて、常に草原への憧れがあった。周辺に狩りに出たりしているとはいえ、都からでは行ける距離は限られる。ダヤイは窓から外を見たが、ここからでは、都の外に広がる草原は見えなかった。

 王が亡くなってから数日後。アレヌは城を抜け出して、息抜きに都の外の丘を歩いていた。このところエリーの締めつけが厳しくなっていた。あいつらも探しているのだ。都とその近郊には〈王の眼〉を持つ者は現れていない。それならどこかほかの地にいるに違いない。〈王〉は常に存在するはずだからだ。そして〈王〉が〈王族〉の子であるとは限らない。〈王族〉から〈修験者〉や〈庶民〉が-私のように-生まれることがあるように。
 目の前の茂みが動いた。アレヌは立ち止まり、そこから現れた〈修験者〉の青い眼を見とめた。
「あなたは〈櫓の塔〉の人?」
「違う」即座に否定の言葉が返ってきた。「私は〈砦の館〉の裔だ」
 アレヌは驚き、喜んだ。エリーの侵攻の折、都にあった最大の〈修験者〉の拠り所である〈砦の館〉の者は、エリーに対してほとんど全滅に至るまで戦ったのだ。その生き残りがいて、流れが続いていたとは。
「ではあなたのお仲間に伝えて。都は、今‥‥」


3.山

 ザガー、もといレザガーとダーハンは山の中腹にいた。この山の向こう側にリーフルの都があるのだ。王か‥‥この俺が。レザガーは皮肉な笑みを浮かべた。村の者は俺を忌み嫌っていたものだ。それとも無意識に畏れ、敬遠していたのか。
 あの日、あの後呼ばれた村長のノアンは、今こそエリーの手から都を奪い返すべしという“隠遁者”-〈修験者〉の意見に、熟考の末同意した。〈修験者〉はほぼすべて行くことに固まっていたが、村からも志願者を募ることになり、出発の準備にもしばらく時間がかかることになった。一人で少しゆっくり考えたかったレザガーは、自分は先に出て都の様子を探ってくると申し出た。〈修験者〉たちは、護衛としてダーハンが同行することで是認した。レザガーは渋ったが、〈修験者〉たちは頑としてその条件を譲らなかった。今にして思えば、山野をよく知らなかったレザガーに一人旅は無謀というほかはなかったのであるが。ダーハンはレザガーとは同年代だったが、すでに〈修験者〉の成年と認められていた。そして〈修験者〉の常として寡黙だったので、考え事をしたいときの連れにはうってつけではあった。
 二人で黙々と歩いていたとき、不意にレザガーの心は妙なものを捉えた。顔を上げ、右の眼で人影を見とめた。
「ダーハン‥‥あれは何者だ? 話に聞いていたエリーとは違うぞ」
「見えない」
「何だって、あそこに‥‥」
 言いさして、レザガーは前に似たようなことがあったのを思い出した。森の中で一角馬パールを見かけたときのことだ。それを見たのは黒の眼を持つ自分と村長のノアンだけだったのだ。後で考えると木が邪魔して見えないはずの場所で。
「とにかく行ってみよう。誰かいた」
 ダーハンは微かに眉をひそめたが、レザガーの後に従った。

 その女性は二人を待っていた。見慣れぬ金の髪と褐色の肌、さらに奇妙なのはその眼で、鮮やかな緑色の虹彩がほぼ眼全体を占め、瞳孔は針の先のように小さかった。
「ようこそ、旅の方々。我が住み処で一夜のもてなしを受けてください」
 その人は洞窟に一人で住んでいた。昼間は外に出て放し飼いにしている山牛の番をするという。二人の旅の目的は、少しも聞こうとしなかった。その人の興味は山でのことだけで、“外”のことにほとんど関心がないように見えた。問われると、自分ことを話した。
「私たちは冬場以外は一人で暮らします。多くの心がそばにいるのは疲れるものですから。私たちは自分の心で引き寄せておけるだけの山牛の世話をするのです。近くに他の者がやって来てその心が捉えらると、私たちは互いに離れます」
 同族の者がいないわけではないようだった。それも聞くところによる〈王〉の〈才〉に似た力を持つ者たちが。
「いつもは姿を見られないように暮らしていますが‥‥今日は変わった心を捉えたので出てみたのです。私たちは〈審判者〉ですから」
「〈審判者〉?」
 レザガーは振り返ったが、ダーハンも初耳の言葉のようだった。
「私たちは世界の真実を見るのです」
 その晩、レザガーはその女性と心を通じて話してみようと試みた。しかし互いの心の存在は感じ取れるものの、遂に言葉を伝えあうことはできなかった。ダーハンの心なら、時にはっきりと捉えることができるようになってきたのに。
 翌朝、歩きやすい道を教えてもらって別れた。別れ際、その不思議な女性は笑みを浮かべて言った。
「あなたの信じるところを進まれますように」
 この孤独を好む風変わりな山の種族の者に、以後会うことはなかった。


4.丘

 アレヌはこのところますます都から遠くまで出歩くことが多くなっていた。いつか会った男は〈修験者〉の常で、確実でないからと何一つはっきり言わなかった。王の死から三月が過ぎようとしていた。都はいまだ不穏な緊張状態のもとにあった。王が亡くなった今、アレヌが城にいる理由は本当はなかった。だが養家に戻る気にもなれず、アレヌはいまだに城に留まっていた。
 何かがアレヌの心に触れた。祖父の心も時折こんな風に感じたものだ。アレヌは顔を林の方に向けた。
「私はアレヌリザーン、故王の血を汲む者」
 アレヌはそこに立ち、待った。

 レザガーは丘陵と林を通して平野にある都を見ていた。大きい‥‥村とは比べものにならない。と、ダーハンが手で合図をし、さっと木陰に隠れた。同時にレザガーも隠れながら、左と右の眼の力を延ばしてみた。右の黒の眼を通して感じられる人影が立ち止まったのがわかり、左の赤の眼と耳を通して言葉が届いた。レザガーは決心して姿を現した。
 アレヌは前に現れた青年の姿を凝視した。そして勝ち誇ったような笑みを浮かべると、優雅に膝を折った。
「王。御帰還を、お待ち申しておりました」

「さて」アレヌはきびきびと立ち上がった。「こんなところにもたもたしていたら危ないわ。エリーはこの辺りにはあまりやって来ないけどね」
 アレヌは都に近づきながらも、都からは見えにくくなるような道筋を取った。
「都は今どうなっている? ‥‥王が亡くなってから」
 レザガーの問いに、アレヌは答えた。
「故王の息子、私の叔父であるノードが“王無き摂政”を務めているわ。私の父と〈世継〉だった兄は七年前に殺されたから」
「七年前、か」
 レザガーはつぶやいた。
「ええ。ノードはつなぎとして、よくやっているけれど、いい相談役止まりだわ。王の器ではないのよ」
「辛辣だな。俺はそれこそ都の道一本、統治の法一つ知らない田舎者だぞ」
「でも、あなたの左眼は赤い」
 アレヌはそれがすべてであるようにきっぱりと言った。黙り込んだレザガーを見て、アレヌはちらりと笑みを見せた。
「長年続いたものを打ち砕くには劇的な演出も必要よ」
「そして自分たちが働いたことが征服者の懐ではなく自分たちのものになると知れば、しばらくは多少のことには目をつぶってくれるというわけか。その間にいろいろ覚えて国を建て直せ、と」
「わかっているじゃない。あとはノードに聞いて」
「その前に、いかにして城内に入る?」
 それまで黙っていたダーハンが唐突に口をきいた。アレヌは顔を引き締めてうなずいた。
「城に通じる秘密の道があるのよ。私も亡くなる直前にお祖父様‥‥王に聞くまで知らなかったわ。使うのはまだ二度目。このへんよ」アレヌは辺りを探しながら言った。「中に入ったらこっちのものよ。城の中では奴らが絶対行かない場所も知ってるし」
「自信があるな。それはどこだ?」
「文書庫よ。エリーは字が読めないから用がないのよ。気晴らしに書を燃やしたりするのにももう飽きたみたいね。奴らは今さらあそこへは行かないわ」
 アレヌの声は厳しかった。レザガーは一見陽気そうなこの〈庶民〉の娘に、個人的な恨みだけでなく、ずっと目の前で行われていた数十年に渡る被支配の屈辱を見た。そしてその中でも絶えることなく続いている〈緑の民〉の誇りを。断絶と忘却で、安逸の代償に村からは失われていた誇りを。


5.城

 暗く崩れかけた地下道をようやく抜けると、アレヌは二人を文書庫に待たせて慌ただしく消え、間もなく一人の男を伴って戻ってきた。
「彼がノードよ。私は外から帰らなきゃ。叔父上、あとは頼みます。ダヤイは適当にあしらっておきますから」
 三人が何も言わぬうちにアレヌはしゃべり終わると、するりと抜け道に入って姿を消した。
「元気なものだ」男は-ノードは低く笑った。続けて短く敬意と歓迎の言葉を述べると言った。「こちらへ来られよ」

「どこへ行っていた」
「あら、いつものことじゃない」
 城門近くで待ち構えていたダヤイにアレヌは快活に答えた。
「いつもとは‥‥違うぞ。なぜこんなに遅くなった。何をしていた」
「何にもないわよ」アレヌはさりげなく笑う。全く、勘がいいんだから。
「アレヌ」
 ダヤイが一歩進み出た。声に危険な匂いが含まれる。
「仕方ないわね」アレヌは肩をすくめた。「これよ」
 アレヌは腰につけていた袋から五つの玉を取り出した。険しい表情だったダヤイは拍子抜けしたようになる。
「これは手先と反射神経の訓練になるのよ。暇だからやってたけど、つい熱中しちゃって」
 アレヌは三つをダヤイに持たせて二つを手に取り、右手から左手に移して投げ上げ、次々と他の三つの玉を取った。常に三つは宙に浮かせておく高度な技である。ダヤイは怒りを忘れて口笛を吹き、思わず手を伸ばした。
「駄目!」
 アレヌは声を出したが、その瞬間緊張が解け、玉は落ちて転がった。
「駄目じゃない。さわったら」
「すまん。だが見事なもんだな」
「訓練すればもっとできるわ。エリーは無器用だものね」
 ダヤイは気持ちの良い声で笑った。「悪かったな。もっと上達したらまた見せてくれ」
 仲間に呼ばれてダヤイは向こうへ歩いて行った。
 玉を拾いながらアレヌはダヤイの笑い声を思い出していた。あの男がエリーでさえなければ‥‥。アレヌは手を止めた。あいつはエリーよ。そのものだわ。大体、あいつがエリーでなければ‥‥何だというの?

「遅くなったわ」
 アレヌは文書庫の奥の部屋に入ってきた。
「現状を説明していたところだ」ノードは考え込みながら言った。「侵攻時一緒だった数部族が今はいないとはいえ‥‥グドゥの部族は決して少なくないし、弱くもない。この人の話からすると、」ノードはダーハンの方を向いてうなずきながら続けた。「〈砦の館〉の裔だけでは数が絶対的に足りんのだ。都には今〈修験者〉はおらんし」
「しかし〈庶民〉をいれれば‥‥」
「〈庶民〉は数には入れられません、王」穏やかにノードはレザガーの言葉を遮った。「石を飛ばして邪魔をするくらいはできましょう。ですが、エリーはみな本格的な戦闘員。我らのうちで太刀打ちできるのは〈修験者〉だけです」
「そうすると‥‥やっぱり〈櫓の塔〉にも連絡を取ってみないと」アレヌが考え込むように言った。
「エリーの侵攻の折、〈塔〉の者は来なかった」珍しくダーハンが吐き捨てるようにつぶやいた。それでも正確さを期す〈修験者〉として付け加えた。「‥‥と言われている」
「以前から〈館〉と〈塔〉の二派が緊密な関係だったとは言い難かったことは聞いているが。しかし‥‥」ノードは困ったように首を振った。
「〈王〉が行けば少しは違うか?」レザガーはゆっくり口を開いた。「そして〈館〉の者が口を添えれば」
 レザガーはダーハンの顔を見据えた。
「やるからには勝たなければ意味がない。彼らが動かなければ勝てないのなら、何としても動かさなきゃならない。ダーハン、〈館〉の裔のお前が以前のことをとりあえず脇に置いて手を組もうと言えば、少しは違うと思うが」
 ダーハンはしばらくじっと黙っていた。ややあって顔を上げて一言、言った。「わかった」


6.塔

 都にはひそやかな噂が流れていた。間もなく〈王〉が帰ってくる、というものだ。エリーがいくらもみ消そうとしても、それは消えなかった。〈庶民〉たちは目顔でうなずきあった。我々は〈王〉の声を“聞いた”と。
 ダヤイはいらいらと城内を歩き回っていた。どうもおかしい。草頭(リーフル)の奴らは何を考えている? 気づけばアレヌの部屋の前に来ていた。ノックもなしに扉を開けると、非難がましい目つきをしたアレヌと目が合った。
「昼間から部屋にいるとは珍しいな」
「そう?」アレヌは取り澄ましたように言う。
「何を企んでいるんだ、お前たちは」
「何のことかしら。この間からずいぶん疑り深いのね」アレヌは無邪気そうに笑った。「落ち着くようにお話でもしてあげましょうか?」
「結構だ」ダヤイはどかどかと出て行った。
「こういう話よ」アレヌはつぶやいた。「『昔々王の弟が、自分が王になろうとしてその兄を殺した。けれど弟の眼はそのままで、〈王の眼〉は遠縁の〈王族〉の一人に現れた。神は必ずしも王に最も近い血縁の者を王にするとは限らない』‥‥これは私たちの間に昔からある言い伝えよ」

「こんな所に本当に〈塔〉があるのか」
 ここはリーフルの領土のはずれ、切り立った岩だらけの地だった。しかし道中で〈塔〉のありかを教えてくれた者の言はみな一致している。既婚女性の多くは〈塔〉の位置を知っているからだ。あまりないことだが、もし青い眼の赤ん坊が生まれたとき、その命を救うためだ。子どもは同じ階級の者が育てるという慣習は昔からあったが、それだけでなく〈修験者〉の赤ん坊はエリーに見つかると殺されるからだった。エリーは侵攻の際の〈修験者〉の激しい抵抗を怖れ、これ以上〈修験者〉をふやすのを防ごうとしていた。〈庶民〉たちは青い眼の子は荒野に捨てるのだと偽っていた。実際は捨てると見せかけて、秘かにだが今ではリーフルの民に知られている唯一の〈修験者〉の拠り所である、〈櫓の塔〉へと送られているのだった。
 山肌を回ったところでダーハンが立ち止まり、指を差した。レザガーは見て、息をのんだ。崖からいくつもの塔が突き出しているのが見えた。いずれも複雑な形をしているが、なるべく遠くが見渡せるような実用的な造りになっているようだった。どうやら半分は崖の中にあって、内部はつながっているらしい。が、見ていてレザガーは妙なことに気づいた。
「おい、入口はどこにあるんだ?」
 ダーハンは肩をすくめると、進み出て唇に指を当て、鋭い音を発した。と、目の前に一人の〈修験者〉が現れた。〈修験者〉の〈才〉を使っての突然の出現に、レザガーはぎょっとした。
「驚くことはない。青の眼の力だ。紫も別の力を持つし、黒と赤もそうだろう」
 ダーハンの言葉に、レザガーは自分の遠視-透視と、読心-呼心の力を思った。前者は生まれたときからの、後者は七年前からの。
 ともあれ入口がない理由は分かった。必要がないからだ。それに、これならエリーは入れはしない。ダーハンと迎えに出てきた者の力によって、レザガーは〈櫓の塔〉に入った。

 レザガーはかぶっていたフードと、左眼の上に巻いていた布を外した。例によって〈修験者〉たちは無表情な面を崩さない。だがレザガーは、水面下、彼らの心の中に、微かにさざなみが走ったのを感じた。
「すでに報せが来ていようが、」
 レザガーは手短に用件を述べた。
「‥‥この身に意味があるのならば、今が奪還の時だと思う。都のエリーに以前の勢いはない」そして続けた。「これは助力申請ではない。リーフルとしての義務なのだ」
 レザガーは自分の言葉に半ば驚いていた。都に行って以来、自分がリーフルの民の運命に捉えられているのを感じていた。
 ダーハンが進み出て、〈砦の館〉の者である印を見せた。
「〈館〉の裔は少ない」ダーハンは事実のみを口にした。
 その昔、都の中にあった〈館〉は辺境の〈塔〉より多くの人数を抱えていたが、エリーの侵攻時に激減したその数はまだ復していない。逃げる〈庶民〉を護衛した少数の者のみがその生き残りだったからだ。
 〈櫓の塔〉の首長が進み出た。「我らは戦いに参加する」
 それですべてだった。レザガーはダーハンの言わぬ問いを口に出した。
「なぜ今は出るのか?」
「侵攻時、エリーは我らの地を通らずにやって来た。それを察知できなかったのは我らの気の緩み、我らの落ち度だ」首長は淡々と言った。「我らに報せが届いたとき、すでに都は落ち、〈館〉の者はほぼ全滅していた。我らだけではそのときから行っても同じことになるのは明らかだった。そこで我らは耐えて待った。臆病者の汚名を着て。機会が来るのを。国を見捨てたわけではない。我らは緑の民(リーフル)、それ以外ではありえない。王命に従おう」


7.力

 都は表面的には静かだった。が、それは嵐の前の静けさであり、待っている者のそれだった。城と〈塔〉、北の-ここからは南の-山脈を越えて丘陵地帯に潜んでいる〈館〉の者たちの間を、秘かに伝令が行き来していた。
 エリーも何かを感じていたものの、実際には何も見出せないでいた。噂は飛び交っていたが、面と向かうと〈庶民〉たちも重要な情報は何一つ洩らさなかった。今まで比較的協力的だった者でさえ。〈王〉という言葉が噂の中に見え隠れしていた。
 そしてある日、遂に事は動いた。
 すべての者が、エリー以外のすべての者が、その時やっていたことをやめた。エリーがいぶかっていると、何かに聞き入っているかのような表情をしていた〈庶民〉たちが、突然歓声を上げた。そして時を移さず、都の両端から〈修験者〉の激しい合図の指笛が響き渡った。戦いが、始まったのだ。

 ダヤイは数人の者を従えて、アレヌの部屋の扉を乱暴に押し開けた。アレヌは落ち着き払ってダヤイを見上げた。
「何か用?」
 アレヌは五つの玉を手に取ると、それを操り始めた。
「用か、だと?」ダヤイは詰め寄った。「よくも騙していたものだな。どうも変だと思っていたんだ」
「行かなくていいの? あなたの民は狼狽しているようよ。あなた、指揮官の一人でしょ」
「黙れ」ダヤイは唇をかみしめた。「お前をひきずっていって俺の楯にしてやってもいいんだぞ」
「無駄よ。私はただの一〈庶民〉。私には何の価値もないのよ」
「だがお前は王の娘として知られている」
 ダヤイはさらに詰め寄ろうとした。
「私に近寄らないで、エリー」
 アレヌは鋭く言い、手の動きを止めた。玉のうち二個は手の上に、他の三個は宙にぴたりと静止した。
「それ以上寄ったら、この玉をあなたたちの喉元へ飛ばすわよ。五人は確実にあの世へ行くわ。玉の五つぐらい、私は自由に操れるのよ」
 ダヤイは静止している玉を見てうなった。
「魔性の者め‥」
「私たちは緑の民(リーフル)。眼による力の行使は厳しい自制の対象よ。普段は必要ないし」
「フン。やっとお前たちが不完全なわけがわかったぜ」ダヤイは毒づいた。
「不完全ですって?」
「そうさ。俺は何で眼の色なんかで〈王族〉〈庶民〉と決まっていて、しかも根本的に違うように扱われるのかずっと疑問に思っていた。確かにお前たちの〈王族〉には詩人もいなけりゃ手技師もいない。逆に〈庶民〉には統治者がいない。戦士に至ってはどちらにもいない。俺たちには全てを兼ね備えた者がいる。お前たちは人間(エリー)のできそこないだったというわけさ。それをせめて補うために、そんな魔物の力を持っているんだ」
 アレヌの紫の眼は火のように燃えた。「私たちは人間(リーフル)よ。お前たちには統治にも武芸にも手技にも、何一つ優れたことのない者が山といるじゃない。その方がよっぽどできそこないよ!」
「それが当たり前の人間じゃないか」
 二人は睨みあった。
「五人ぐらい殺しても他の者がすぐお前を手にかけるぞ」ダヤイは押し殺した声で言った。
「そうしたら、対等に戦うこともできないのに健気に抵抗した王の血を引く誇り高き〈庶民〉の娘を殺したとして、エリーの株はますます下がるでしょうね」
 リーフルの〈庶民〉は口が回る。言い負かされてダヤイはしばらくアレヌを睨みつけていたが、聞こえてきた外の物音に舌打ちすると、それ以上は何も言わず、荒々しく扉を閉めて出て行った。


8.戦

 戦いの流れはリーフルの方に傾いていた。厳密に数えれば、〈塔〉と〈館〉の裔の者を併せても、エリー全員の数には達していなかった。しかし彼らには勢いがあり、高揚した〈庶民〉たちもあの手この手でエリーの邪魔をしていた。都にいたエリーは長い間本格的な戦闘をしていなかった。それはリーフルの方も同じはずだったが、彼らの士気は高かった。リーフルの民は〈王〉の声を“聞いた”のだ。
 レザガーは戦いの後方で数人の〈修験者〉に守られて立っていた。まだ荒い息と動悸が治まっていなかった。つい先程、都の端で、レサガーは心を最大限に開いたのだ。その途端、左の赤の眼を通して、すべての人々-都にいる緑の民(リーフル)すべての心が感じられた。圧倒される気持ちを抑え、レザガーははっきりとメッセージを送ったのだ。
『私は〈王〉だ。戻ってきた。都をエリーの手から解放しよう』
 ダヤイは部下を叱咤激励しながら街中で指揮を執っていた。戦線は次第に崩れつつあった。とある角を曲ったとき、その男を見つけた。遠目で眼の色までは確認できなかったが、周囲の状況から重要人物と知れた。ダヤイは咄嗟に手槍を掴むと、狙いを定めて投げた。
 一人の〈修験者〉が振り向いた。が、槍を払いのけるには遠すぎた。しめた!とダヤイが思った瞬間、その〈修験者〉の男の姿が消え、狙った人物の前に出現して槍を体で受けた。その光景に驚いている暇はなかった。ダヤイは身近に起こった激しい戦闘の中に引き込まれていった。

 ダヤイは剣についた血を払った。周囲には立っているエリーが少なくなり、徐々に戦いが収まりつつあるのが感じられた。しかし長グドゥが全身を返り血で朱に染めて、まだ諦めた顔をしていないのが見えた。
「俺がグドゥだ! 俺の相手をする者はいないのか?」
 さすがの勇敢な〈修験者〉たちも、グドゥの回りのいくつもの死体を見て遠巻きにしていた。
「誰もいないのか?」グドゥは吠えるような笑い声を上げた。
 一人の〈修験者〉の女がひらりとその前に跳び出した。
「ダーハン!」ダヤイは後ろで誰かが叫ぶのを聞いた。
 すぐに二人は激しく打ち合い始めた。レザガーは見ているうちに、ダーハンが成り行きに酔って跳び出したわけではないのがわかった。その娘は単にレザガーと比較的親しいから、というだけでそのたった一人の護衛に選ばれたわけではなかったのだ。ダーハンは〈砦の館〉の裔の者の中で、一番の剣の使い手だった。
 二人の戦いはなかなか決着がつかなかった。互いの伎倆はほぼ互角だった。が、ダーハンは長引けば女の身ゆえ細身の自分の体力が先に尽きるであろうことを冷静に見抜いていた。相手もそれを待っているのは明らかだ。それでも青の眼の力を用いようとはダーハンは露ほども思わなかった。一対一の戦い、特に異種族とのそれで、その力を使うことは〈修験者〉の最も厳しい禁制事項だった。ならば、方法は一つ。ダーハンはすべてのガードを下げ、相手に攻め込ませる隙を作った。攻撃を繰り出してくれば相手の方にも隙が生まれる。そうしてできた隙に、相手の心臓だけに注意を集中してダーハンは剣を突き出した。相手の顔に驚きの表情が走り、次いでそれは凍りついた。グドゥの体はずるずると崩折れ、動かなくなった。ダーハンはそれを見届けると、自らの腹に突き刺さっていた相手の剣を、ほとんど顔色を変えずに引きぬいて捨てた。鮮血があふれ、ダーハンはがくりと膝をついた。助かる傷でないのはわかっていた。どうせ同じことなら敵の剣を腹に埋めたまま死にたくはない。他人事のようにそんなことを考えた。
 いつの間にかグドゥとダーハンの回りには円陣ができていた。戦いは、終わっていた。


9.名

「ダーハン‥」
 レザガーは人をかきわけて前に出てきた。ダーハンは彼を見上げて、ふっと微笑んだ。普段はほとんど表情を変えない〈修験者〉であるダーハンの、めったに見せないその笑顔。
「私の名を解放して、レザガードア。ダーハヌアーラを」
 〈修験者〉の全名の解放。それは死を意味する。〈修験者〉の全名はエリーの第三の名、〈親称〉にあたる。彼らはそれを自分にとって重要な人物にしか、明かさない。〈修験者〉のそれは、死後その名を知る親しい者によって解放される。以後、それまでの通称であった略称を使えるのはごく親しい者だけとなる。
「ダーハヌアーラ‥‥」言葉が見つからなかった。
「祝福を、我らが王に」
 ダーハンは事切れた。

 レザガーは立ち上がり、グドゥをみとっていたエリー、ダヤイと顔を合わせた。
 これが〈王〉か。自分では剣の一振りもしない、この若僧が。奇妙にちぐはぐな印象を与える色違いの目。
「お前が、王か」
 レザガーはその言葉を反芻した。望んだわけではない。そのとき、レザガーは、もし本心より望むのなら、赤の眼を捨てることができるのを知った。〈王〉自らがその民を拒んだとき、その元〈王〉は生きながらえることができるのか、再び新しい王が現れるかどうかはわからなかったが‥‥。レザガーは辺りを見やった。多くの死傷者。身を持って自分を守った〈塔〉の男。そしてダーハン‥‥ダーハヌアーラ。人々の心を捉えたときの高揚感。呼びかけへの歓喜に満ちた反応。ここは俺を受け入れた。ならば俺も責任を果たさねば。もし神というものがいるのなら、神が俺を選んだのだ。それなりの理由があるのだろう。
「-私が〈王〉だ。お互いこれ以上の流血は好ましくあるまい。緑の民(リーフル)の土地より立ち去れ。そしてこれからの接触は平和なものにしたいものだ。かつてやっていたと聞いているように」
 侵攻前、エリーはリーフルと交易などをして、もっと穏やかに接していたものだった。
「わかった。今回はこちらの負けのようだしな」ダヤイは他に答える者がいないようなので進み出た。「我々は石の都に居過ぎて体の芯が錆ついたようだ。我らは自由の民(エリー)、野に帰ることにしよう」
 ダヤイはリーフルの〈王〉に背を向け、エリーをまとめにかかった。

 アレヌにばったり出会った。
「どうだ、出て行ってやるぜ」ダヤイは自嘲気味に言った。
 何か言ってやろうと口を開きかけたアレヌは言葉を飲み込み、目をそむけた。ダヤイもそのさまを見て言いかけたことをやめた。さまざまなことがその胸に去来した。
「アレヌリザーン、覚えておくがいい」ダヤイはちょっと言葉を切ってから続けた。「俺の三番目の名は、ダーナヴィーンだ」
 アレヌが何も言えないでいるうちに、ダヤイ=ザヤーリ=ダーナヴィーンは去って行った。
 アレヌは立ち尽くしていた。明日からは新しい日が‥‥緑の民(リーフル)本来の暮らしが始まるのだ。だから今夜は感傷に浸っていてもいいでしょう? 明日からは、すべて新しくなるのだから。

 

 

=====


一応要素はほぼすべて(使わないかもしれないものも含めて)入れてあると思う。
あんまりおもしろい話じゃなかったよな、と読み返してみたら割とよくできてた? というよりかなり細部を忘れていたw
あ、これも〈危機相〉だったな。まだサブシリーズ構想する前ですが。
どうしても恋愛ものの要素を入れずにはいられないのか>自分。それも悲恋系。読むのはハッピーエンドが好きなのになー。

「天蓋」其ノ二(1984.11.20)初出に加筆修正。

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